あおり運転には罰則がある! 定義や具体的行為、あおり運転被害を回避する方法を解説
必要以上に車間距離を詰めたり、クラクションを鳴らしたりして、故意に他の車両の走行を妨害する行為をあおり運転と言います。2020年6月30日の改正道路交通法施行により、これらの行為を取り締まる妨害運転罪が創設され、罰則が設けられました(※)。
本記事では、あおり運転の定義と具体的な行為や罰則、あおり運転を回避する方法、被害者になったときの対処法を解説します。
あおり運転の定義
あおり運転という言葉は、正式な法律用語ではありません。あおり運転は一般的に車間距離を異常に詰めたりクラクションやバッシングで前の車を煽ったりする行為が知られていますが、令和2年6月の道路交通法の改正まではその定義が明確に規定されていませんでした。この時の改正により、あおり運転とされる行為が「妨害運転」として他の車両等の通行を妨害する目的で一定の違反行為を行ったり、交通の危険を生じさせる恐れがある行為を行うことと定義されることとなりました。政府広報オンラインの発表によると、あおり運転の被害内容は以下となっています(※)。
あおり運転の被害内容 |
割合 |
後方からの著しい接近 |
81.8% |
クラクションやハイビーム |
20.4% |
幅寄せ |
16.6% |
割り込み後に急ブレーキ |
14.9% |
蛇行運転 |
10.5% |
つきまとい |
9.8% |
停車して道を塞ぐ |
3.5% |
その他 |
1.4% |
2020年6月の改正道路交通法によりあおり運転は厳罰化
従来までは、あおり運転自体を取り締まる法律は存在せず、刑法の「暴行罪」などを適用し対処していました。しかしあおり運転が原因の事故やトラブルは以前から問題視されており、厳罰化を望む声が上がっていました。そのような中、2017年に発生した高速道路上でのあおり運転を原因とする、一家4人の死傷事故が大きな契機となり、2020年6月30日に改正道路交通法が施行されました。
同改正法では、あおり運転を取り締まる「妨害運転罪」が新たに創設され、対象となる10類型が定められています(※)。
あおり運転の具体例
妨害運転罪の取り締まり対象となる具体的な行為(10類型)は以下の通りです(※)。
あおり運転の10類型 |
具体例 |
車間距離不保持 |
極端に車間距離を詰める、速度を合わせてぴったり走る |
進路変更禁止違反 |
並走車の前で急に進路変更を行う |
急ブレーキ禁止違反 |
不要にもかかわらず急ブレーキを掛ける |
追い越しの方法違反 |
車間距離が保てない無理な追い越し、追い越し禁止道路での追い越し |
通行区分違反 |
対向車線にはみ出して運転する、逆走する |
警音器使用制限違反 |
不必要にもかかわらず執拗にクラクションを鳴らす |
減光等義務違反 |
不必要にもかかわらず前照灯を使用したり、執拗にパッシングしたりする |
安全運転義務違反 |
危険な蛇行運転や執拗な幅寄せ |
最低速度違反 |
高速道路で故意に最低速度以下で運転する |
高速自動車国道等駐停車違反 |
高速道路上での不必要な停車や駐車 |
なおこれらはあくまでも典型例であり、該当しない行為であっても悪質性や危険性が高ければ、あおり運転として処分されることがあります。
あおり運転の罰則
妨害運転罪に該当するあおり運転は、危険性の程度により以下の罰則が課されます。
1. 交通妨害を目的としてあおり運転をした場合
刑罰:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
行政処分:違反点数25点(免許取り消し、欠格期間2年)
2. 1.に加え著しい危険を生じさせたとき(高速道路での停車など)
刑罰:5年以下の懲役または100万円以下の罰金
行政処分:違反点数35点(免許取り消し、欠格期間3年)
あおり運転の被害を回避する方法
前提として、あおり運転はする側に大きな問題があります。しかしこちらも意地になって運転をすれば、事故や事件につながる恐れもあります。そのため、被害を未然に回避することが大切です。
ドライブレコーダーとステッカーを設置する
ドライブレコーダーを搭載し「録画中」のステッカーを後続車から見える位置に貼っておけば、あおり運転の抑止力になります。もし金銭的な理由などからドライブレコーダーの設置が難しいときは、ステッカーとダミーカメラを設置するだけでも良いでしょう。
ドライブレコーダーを搭載すれば、万が一あおり運転の被害に遭っても、証拠として提出できます。内容によっては刑事処分や慰謝料請求も可能です。
思いやりのある安全運転をする
思いやりのある安全運転を心掛けることは、あおり運転の被害を回避するだけでなく、自身があおり運転の加害者にならないためにも大切です。
具体的には、交通ルールを守った運転をすることです。また車間距離は十分に保ち、無理な割り込みはしないことや、急発進や急停車をしないことなどが挙げられます。
心身の調子が優れなかったり、時間に余裕がなかったりするときは、車を運転しない判断も必要です。
後続車が急いでいそうなら道を譲る
後続車が急いでいそうなときや危険な運転をしているときは、路肩に停めたり、駐車場に入ったりして、道を譲りましょう。高速道路であれば、第一走行レーンに移動し、道を譲ります。先述の通りあおり運転被害の8割 は「後方からの著しい接近 」のため、道を譲れば被害の拡大を防ぎやすくなります。
なお上記を試してもあおり運転が続くときは、次に紹介する方法ですぐに警察に通報しましょう。
あおり運転をされたらすぐに警察に通報を
もしあおり運転をされ身に危険を感じたときは、以下の手順で警察に連絡しましょう。
1. 人目のある駐車場に停車する
2. 110番通報をする
3. 警察が駆けつけるまで車から下りない
4. 可能であれば相手の行為を撮影する
人目のある駐車場に停車し車の鍵を掛ける
あおり運転の被害に遭ったら、駐車場やサービスエリア、パーキングエリアなど、人目のある場所に停車しましょう。道路上は危険なため、可能な限り駐車場を選ぶのがおすすめです。また人目がある場所を選ぶことで、行為がエスカレートするのを防ぐ役割があります。
停車した後は、車の全ての窓を閉め、ドアにはロックを掛けておきます。
110番通報をする
停車したらすぐに110番通報をしましょう。同乗者がいるのであれば、あおり運転の被害にあった段階で通報しても良いでしょう。通報するときは、現住所または道路の路線名、周囲の建物など現在地が分かる情報を伝えます。
併せて、あおり運転の被害の状況や、相手の車、特徴なども伝えましょう。警察から折り返しの連絡が来ることもあるため、すぐに電話に出られるようにしておきます。
警察が駆けつけるまで車から降りない
110番通報をした後は、警察が駆けつけるまで車の中で待機しましょう。被害者によっては車から降りて加害者と一悶着起こることもあるかもしれません。しかしやり返せば身の危険があるだけでなく、度が過ぎる場合あおり運転の被害者にも傷害罪などの責任が生じる恐れがあります。
そのため身の安全を守れる環境を確保した後、車内で冷静に警察の到着を待ちましょう。
可能であれば相手の行為を撮影する
もし相手が車を蹴る、窓ガラスを叩く、暴言を吐くなどの行為をしてきたら、ドライブレコーダーで撮影し、記録しておきましょう。ドライブレコーダーがないのであれば、スマートフォンのカメラで撮影し、証拠を残すのも有効です。その際は相手の行為や顔、服装だけでなく、車とナンバープレートも撮影しておきましょう。
なお同乗者がいるのであれば、あおり運転を受けた運転中からスマートフォンで撮影しても問題ありません。ただし運転者自ら撮影すると「ながら運転」に該当し、処罰の対象となる恐れがあるため気を付けましょう。
あおり運転は加害者にも被害者にもならないように注意しよう
妨害運転罪の創設により、あおり運転には悪質性に応じた2つの罰則が設けられました。あおり運転は故意に他車の走行を妨害する行為ではあるものの、急いでいる、イライラしているなどの理由から、自分があおり運転の加害者になってしまう恐れもあります。
車を運転するときは余裕を持って、安全運転を心掛けることが大切です。また、被害を回避し、万が一被害にあっても法的に対処できるように、ドライブレコーダーを搭載するのもおすすめです。