車検時のバッテリー交換は必要? バッテリー関連の保安基準や交換が必要になるケースを解説
車検の保安基準には複数の項目があり、その中にはバッテリーに関連するものもあります。そのため車検時にバッテリーの交換が必要かどうか悩む方もいるのではないでしょうか。
本記事では車検時にバッテリー関連で気を付けるべきことやバッテリーを交換するタイミング、バッテリーを交換する際の注意点について解説します。記事の内容を参考に、バッテリー交換が必要かどうか見極めましょう。
車検で 点検されるバッテリー関連の項目
車検では、道路運送車両法に定められている保安基準を満たしているかどうかがチェックされます。保安基準は車の装置、部品ごとに多くの項目に分かれており、バッテリー関連の項目は、第17条の2「電気装置」について、詳細を定めた「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」の第99条に基づく以下の2点です(※)。
● 蓄電池(=バッテリー)が自動車の振動、衝撃などによって移動または損傷することがないようになっていること
● 蓄電池(=バッテリ)が木箱その他適当な絶縁物で完全に被われていること
バッテリーの機能や動作に関しては言及がありません。つまりバッテリーに関しては、絶縁物で覆われており、かつ動いたり壊れたりしないよう固定されていれば、たとえ劣化や故障が生じていても保安基準を満たしていると言えます。
車検のタイミングでバッテリー交換が必要になるケース
保安基準を満たしていても 、実際にはバッテリーの劣化または故障によって車検を受けられなかったり、車検をパスできなかったりすることもあります。
車検前や車検時にバッテリー交換が必要になるケースは以下の通りです。
バッテリーが故障していて車が動かない場合
バッテリーはエンジンの始動時に電力を供給する役割を担っているため、バッテリーが故障するとエンジンが始動しません。
保安基準の第8条には「原動機は運転者席において始動できるものでなければならない。」とされており、その詳細を定めた「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」の第10条には「原動機(=エンジン)は運行に十分耐える構造及び性能を有すること。」とされ「原動機の始動が著しく困難なもの」はその基準に適合しないとされています(※)。
つまり、エンジンがかからない状態では車検に通らないという事で、バッテリーが弱っていてブースターケーブルで繋げばかかるといった状態も車検不適合になってしまいます。
また、車検を受けるには、自分で役所に持ち込むユーザー車検であれば当然、自動車を持ち込まなければならないため、エンジンが始動せず走行できない状態であればそもそも車検を受けられませんし、整備事業者に車検をお願いして引取りに来てもらうとしても、上記の保安基準があるためバッテリーの交換や充電などの、エンジンが始動できるようにするための整備が必要です。
バッテリーの 故障または劣化によるライトの光量不足
ヘッドライトを含む車のライトはバッテリーと発電機から(エンジンがかかっていない時はバッテリーのみから)電力の供給を受けているため、バッテリーが故障または劣化していると、供給できる電力が低下するためヘッドライトの光度(明るさ)が低下する恐れがあります。
道路運送車両の保安基準の細目を定める告示では、前照灯(ヘッドライト)について、走行用前照灯(=ハイビーム)は「夜間にその前方100mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有するものであること。」、すれ違い用前照灯(=ロービーム)は「夜間にその前方40mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有するものであること。」と基準が定められおり、車検時の検査ではヘッドライトテスターを使って光度を測定します。そのためバッテリーの劣化によって十分な明るさを確保できないと判断された場合、車検をパスできない可能性があり注意が必要です(※)。
バッテリーを交換するタイミング
バッテリーは携帯電話のバッテリーと同様に消耗品なので、時間の経過とともに充放電の繰り返しで劣化していきます。バッテリー(ここでいうバッテリーはガソリンエンジン車のものとハイブリッド車の補器バッテリーの事)を交換するべきタイミングは車の使用環境や車種などにもよりますが、おおむね使用開始から2~3年 後と言われています。
車検は乗用車の場合、新車登録から初回3年、以降2年に1回のペー スで受ける必要があり、バッテリー交換が推奨されるタイミングと重なるので、バッテリーの交換タイミングとしては車検ごととも言えます。そのため、車検時にバッテリー交換を勧められることが多々あるのです。
ただし以下のような症状が出ている場合は、車検の時期を待たずにバッテリーの交換を検討した方が良いでしょう。
● セルモーターの回転が弱い、一瞬タイムラグがあってから回る
● ヘッドライトが暗い、エンジン回転を上げると明るくなる
● パワーウィンドウの動きが遅い
スモールランプやハザードランプを消し忘れて、エンジンを切った状態で長時間車を離れたりすれば、発電機からの充電が無い状況で放電し続けることになり、当然バッテリー上がりでエンジンがかからなくなりますが、それ以外にもバッテリーを弱らせてしまう場合があります。
まず、エンジン始動時にセルモーターを回す際が一番バッテリーの電気を消費します。そのため、短距離走行の繰り返しや市内走行でアイドリングストップの作動が頻繁にある場合など、エンジンを始動する頻度が多い(=セルモーターを回す頻度が多い)場合はバッテリーが早く弱っていきます。また、夜間走行が多かったり、後付けでオーディオ・ナビのモニターや追加ランプ類などの電装品を追加で付けている場合、駐車中に長時間エンジンをかけた状態で(=アイドリング状態)エアコンをかけ、車内で食事を取ったり休憩したりするような車の使い方が多い場合は、発電機からの充電に対して電気を使う量(=放電量)が多いため、バッテリーを消耗しやすい傾向にあります。
そのため、車の使い方、使用交通状況などに応じて、日頃から定期的にバッテリーの状態を点検することをおすすめします。
バッテリーの点検方法
バッテリーが弱っているかどうかは見た目では判断できません。昔のようにバッテリーの外からバッテリー液の量が見えて、減ってきたら蒸留水を補充してというようなメンテナンスは、今の車のバッテリーでは出来なくなっています。それはハイブリッド車やアイドリングストップ、充電制御など省燃費のために車が進化したことへの対応として、そのような車に対応したバッテリーが搭載されるようになったためです。もちろん、使用年数も目安にはなるため、例えば車検ごとに必ず交換するなど決めてしまえば、バッテリーが原因での故障はほとんど防げるでしょう。ただ、先ほど述べたように車の使い方や使用交通状況などによって、バッテリーの劣化具合は変わってきます。まだ使えるバッテリーを交換するのはもったいないですし、費用の負担だけでなく廃棄物が増えて環境にも負担を与えてしまいます。本当に交換が必要な時にバッテリーを交換するにはどうしたらいいでしょうか。
そのためには、専用のテスターを使ってバッテリーを点検診断することです。
これも昔の話ですが、バッテリーの良否は一般のサーキットテスターなどでバッテリー電圧を測って判断していました。しかし、バッテリーが車の進化に合わせて進化、高性能化してきたため、このような簡単な点検ではバッテリーの良否は判断できなくなっています。
現在のバッテリー専用テスターでは、バッテリーの電圧はもちろん、電気を蓄える能力や内部の劣化具合も短時間でチェックできるようになっており、バッテリーがまだ使える状態かどうか、あとどれ位使用できるかの判断の手助けとなります。
このようなバッテリーテスターは、さすがに個人で持っておくのは価格的にも現実的でありませんので、整備事業者に点検をお願いするのがいいでしょう。
参考に、旧来の一般的なサーキットテスターでのバッテリーの電圧測定方法を記載しておきます。ただ、この測定はあくまで簡易的なもので、上記でお伝えしたように最近の車のバッテリーはこの測定方法では良否判断は出来ないという事はご了解ください。
さて、一般的なサーキットテスターと言いましたが、これは小学校の理科の実験で使ったようなもので構いません。直流15V~20Vくらいを測定できるものであれば、車のバッテリー電圧チェックへの使用が可能です。表示はアナログ式でもデジタル式でも構いません。
自分で測定する場合は、イグニッションがオフであることを確認した上で、バッテリーのプラス(+)端子にテストリードの赤いプラグを、マイナス(-)端子にテストリードの黒いプラグをそれぞれ繋ぎましょう。アナログ式テスターの場合はくれぐれもプラスマイナスを反対に繋がないように注意してください。するとテスター画面上に電圧の測定値が表示されます。
まず、エンジンがかかっていない状態でのバッテリー電圧を読みます。走行直後は発電機からの充電の影響でバッテリー電圧が高いので、エンジンを切ってから10分位おいてから測定をしましょう。この時の電圧が12.4V以上あれば正常です。12.3V以下の場合は充電不足が考えられますが、バッテリーが交換タイミングと言われる2年~3年以上経っていれば、早めの交換を検討しましょう。バッテリーが新しく、先ほど例に挙げたようなバッテリーを弱らせる車の使い方での充電不足であれば、バッテリーを充電する事で回復できます。ただ、電圧が10.5V以下と極端に低い状態であれば、古いバッテリーは即交換、新しいバッテリーでも即充電が必要です。
上記のバッテリー電圧が低い場合は、発電機故障での充電不良も考えられるため、エンジンをかけた状態でのバッテリー電圧もチェックしてみましょう。
エンジンをかけた状態で測定すれば、発電機からの充電を加味したバッテリー電圧が分かります。測定値が13.5~14.5V程度なら正常値ですが、1 3V未満や16V以上であれば発電機の故障の可能性があり、そのままではバッテリーが故障してしまうため発電機の点検修理を整備事業者に依頼しましょう。
車検時の バッテリー交換は断ることもできる
車検を整備事業者に依頼すると、バッテリーテスターを用いたバッテリー点検が行われるのが一般的です。測定結果が良くない場合は車検と一緒にバッテリーの交換を勧められることが多いですが、前述の通りバッテリーの機能そのものは保安基準には含まれていないため、バッテリー交換を断ることも可能です。
ただし先述の通りバッテリーはエンジン始動をはじめ、各種ライトやエアコン、パワーウィンドウ、ワイパー、カーオーディオ、カーナビなど、さまざまな電装品に電力を供給する役割を担っています。バッテリーが劣化または故障すると、車を動かせなくなったり、走行に支障をきたすような不具合が発生したりする原因となります。
そのため、車検時にバッテリーの劣化を指摘されたら、基本的には 交換を検討した方がいいでしょう。
車検を受ける際はバッテリー交換を検討しよう
車検に通るかどうかの判断基準となる保安基準でバッテリーについては、きちんと固定されているか、絶縁体に覆われているかしか求められていません。
そのため、エンジンさえ始動できれば、バッテリーが弱っていても車検を通すことは可能と言えます。 しかし、エンジンがかかったとしても、バッテリーが劣化しているとヘッドライトの保安基準に適合せず、車検に通らない可能性もあります。
また、バッテリーの劣化はエンジンがかからなくなる「バッテリー上がり」や、車に多く搭載されている電装品の故障にもつながり、安全快適に車を使用できる状態とは言えません。
バッテリーの寿命は車の使い方や電装品の数などによって異なるものの、おおむね2~3年のケースが多いです。そのため、車検を受けるタイミングが来た際には、バッテリーの交換を検討することをおすすめします。
車検を受ける業者を選ぶ際には、点検したバッテリーの状態を分かりやすく説明してくれる整備事業者を選びましょう。
「車検の速太郎」の店舗では、お客様立合いの元、お客様のお車のバッテリーの状態を目で見て確認してもらいながら、点検結果を専門知識を持った整備士が専門用語を使わず分かりやすく説明いたします。そして、劣化したバッテリーでも交換するかしないかはお客様が決める事が可能です。多く搭載されているバッテリーは在庫もあり、交換の場合はその場で車検と一緒に実施する事も可能ですのでおすすめです。