飲酒運転の罰則内容は? 酒気帯び運転と酒酔い運転の違いや罰金、違反点数を解説
飲酒運転は大きな社会問題であり、厳しい罰則が科せられる違反行為です。アルコールは脳の機能に影響を与え、飲酒量によりますが運転時の判断力や注意力を著しく低下させます。飲酒運転による交通事故での死亡事故率は通常の事故と比べて約6.1倍にも上り、極めて危険な行為です(※)。
運転者本人だけではなく、同乗者や車両・酒類提供者にも厳しい罰則が設けられており、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」では、それぞれ異なる基準で処罰されます。またアルコールは体内から抜けるまでに長時間を要するため、前日の飲酒でも翌朝の運転時に検挙されるケースがあることも罰則基準と併せて認識しておきましょう。
本記事では、飲酒運転の種類や罰則内容、アルコールが運転に与える影響について詳しく解説します。お酒を飲む機会がある方は、必ず確認しておきましょう。
飲酒運転の違反には酒気帯び運転と酒酔い運転の2種類がある
飲酒運転の違反には「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があり、それぞれ定義が異なります。また判定基準もそれぞれ決まっているので、確認しておきましょう。
酒気帯び運転とは
酒気帯び運転は、呼気中アルコール濃度が0.15mg/L以上の状態で車両を運転することです。なお、この基準値は、血中アルコール濃度が0.3mg/L以上の場合と同等と定められています(※1)(※2)。
運転者の飲酒運転が疑われる場合、警察官はアルコール検知器で運転者の呼気に含まれるアルコール濃度を測定し、基準値を上回れば運転者の体調や飲酒量に関係なく処罰対象として検挙します。
なお、アルコール濃度が基準値未満でも、運転に支障を来す状態であれば酒酔い運転として検挙される可能性があります。
酒酔い運転とは
酒酔い運転は、アルコールの影響で正常な運転ができない状態での車両運転です。警察官は運転者の身体状態を総合的に判断して、酒酔い運転かどうかを見極めます。
運転者の意識がもうろうとしていたり、ろれつが回っていなかったりする状態は酒酔い運転の典型的な症状です。また白線の上を真っすぐ歩けない、顔が赤く目が充血しているなどの特徴も判断材料となります。
道路上で蛇行運転をしている車両は、酒酔い運転の疑いがあるとしてパトカーに停止を求められます。この違反は酒気帯び運転よりも重い処罰の対象です。
飲酒運転は運転者への行政処分と罰則がある
飲酒運転は、酒気帯び運転か酒酔い運転かによって行政処分と罰則が異なります。それぞれの行政処分と罰則の内容を解説するので、把握しておきましょう。
酒気帯び運転の行政処分と罰則
酒気帯び運転では、呼気1L中に含まれるアルコール濃度によって行政処分が異なります。行政処分と罰則、違反点数(基礎点数)は以下の通りです。
呼気1L中の |
違反点数 |
行政処分 |
罰則 |
0.15mg以上0.25mg未満 |
13点 |
免許停止(90日間) 注)前歴ありは取り消し(1年以上) |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金
|
0.25mg以上 |
25点 |
免許取り消し(2年間) 注)前歴が2回以上ある場合は3年以上 |
酒気帯び運転で人身事故を起こした場合は、「自動車運転過失致死傷罪」または「危険運転致死傷罪」が適用されます。
初犯でアルコール量が少なければ、逮捕されないケースもあります。しかし、前科がある方は、逮捕・勾留など、より厳しい処置を受ける可能性が高いでしょう。
酒酔い運転の行政処分と罰則
酒酔い運転は、運転者の状態に基づいて判断されますが、一般違反行為の酒気帯び運転と違い、免許停止期間が長くなる特定違反行為として行政処分されます。酒酔い運転の場合は、違反点数が35点となり、免許取り消し処分が科されます。また運転免許が取り消された場合、3年間は免許を再取得できません。
酒酔い運転に対する刑事罰は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。さらに、人身事故を引き起こした場合には、酒気帯び運転と同様、「自動車運転過失致死傷罪」または「危険運転致死傷罪」が科されます。
特に危険運転致死傷罪で死亡事故を起こした場合は、酒気帯び運転、酒酔い運転共に15年以下の有期懲役という重い刑罰が科される可能性があることも覚えておきましょう(※)。
飲酒運転は同乗者や車両・酒類提供者にも行政処分と罰則がある
飲酒運転に対しては、運転者だけでなく、同乗者や車両・酒類提供者にも厳しい処分が科されます。それぞれの行政処分と罰則を押さえておきましょう。
同乗者への罰則
運転者が飲酒運転を行っていることを知りながら同乗することは、道路交通法で禁止されている行為です。同乗者は運転者と同様の厳しい処分を受けることになります。
【同乗者への罰則】
飲酒運転の種類 |
罰則 |
酒気帯び運転 |
2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
酒酔い運転 |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
また、同乗者が運転免許を所持している場合は、同乗者には重大違反唆し(そそのかし)として免許停止や取り消しの行政処分が科せられる可能性もあります。
さらに、飲酒運転による人身事故が発生した場合、事故の状況によっては同乗者にも損害賠償責任が生じる可能性があります。「近くまでだから大丈夫」という安易な考えで同乗した結果、重大な事故につながるケースも少なくありません。
車両・酒類提供者への行政処分と罰則
運転者が飲酒運転で検挙された場合、車両提供者も罰則の対象です。
【車両を提供した者への罰則】
飲酒運転の種類 |
罰則 |
酒気帯び運転 |
3年以下の懲役または50万円以上の罰金 |
酒酔い運転 |
5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
また運転者に酒類を提供した場合も、罰則の対象となります。
【酒類を提供した者への罰則】
飲酒運転の種類 |
罰則 |
酒気帯び運転 |
2年以下の懲役または30万円以上の罰金 |
酒酔い運転 |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
「1杯だけ」「すぐ近くだから」という理由で車両・酒類を提供した場合でも、罰則の対象となります。運転者が飲酒することを知りながら車両を提供したり、運転することを知りながら酒類を提供することは、重大な交通事故を引き起こす可能性がある危険な行為として厳しく取り締まられています。
飲酒が運転に与える3つの影響
飲酒運転が厳しく取り締まられる理由は、アルコールが運転に及ぼす危険な影響にあります。アルコールは運転者の身体機能に影響を与え、事故を引き起こす可能性が高くなります。
飲酒後に起こる身体機能の変化と運転への影響を把握しておきましょう。
認知・判断力が低下し理性的な判断がしにくくなる
アルコールは脳に影響を与え、認知・判断力の低下を招き、状況を正確に把握する能力を損なわせます。そのため、通常なら容易な判断でも、飲酒時には瞬時の的確な判断が困難になるのです。例えば、信号が赤に変わった際にブレーキを踏むタイミングを逃してしまう可能性が高まります。また人や車が急に飛び出してきた場合でも、とっさの判断ができません。
さらに、理性的な判断もしにくくなることで、運転が乱暴になりがちです。気が大きくなりスピードの出し過ぎで歩行者や他の車両に気付いて「危ない」と認識したときには間に合わず、事故を起こすなどの危険性が高くなります。
研究によると、血中アルコール濃度が0.05%でも交通事故のリスクは2倍に上昇することが分かっており、飲酒運転の危険性が科学的にも示されています(※)。
真っすぐに走行できなくなる
飲酒すると、運転者は車両を真っすぐに走行させることが困難になります。アルコールが脳の機能に悪影響を与え、体の平衡感覚を乱すためです。
平衡感覚の乱れにより、直進運転がしづらくなり蛇行運転を起こしがちです。そのため、ガードレールや電柱に衝突する事故を起こす可能性が高まります。またカーブを曲がり切れず、対向車と正面衝突事故を起こすなど、第三者を巻き込んだ、より大規模な事故に発展しかねません。
さらに、アルコールの影響は体質によって個人差があり、少量の飲酒でも平衡感覚が大きく乱れる場合があります。「自分は大丈夫」という過信は非常に危険です。
車の操作が遅れる
アルコールの摂取後は判断力だけでなく、運動神経の働きも低下します。とっさの状況に対する動作が遅くなり、急な歩行者の飛び出しがあった際にハンドルやブレーキ操作が間に合わないかもしれません。
また先行車が減速した際にブレーキを掛けるタイミングが遅れて、追突してしまう可能性もあります。
車の操作が遅れたことで周囲の人を事故に巻き込むと取り返しがつかないので、飲酒した状態での運転は必ず避けてください。
どれくらいの量を飲むと飲酒運転になる?
呼気中アルコール濃度が0.15mg/L以上になると酒気帯び運転ですが、実際にはどれくらいの量なのでしょうか。飲酒運転になるお酒の量や、アルコールが体から抜けるまでにかかる時間を確認してみましょう。
アルコール1単位を摂取すると飲酒運転になる
酒気帯び運転の基準値となる呼気中アルコール濃度0.15mg/Lは、アルコール1単位(純アルコール20g)に相当します。アルコール1単位をお酒に換算すると、以下の通りです。
● ビール中瓶1本(500ml)
● 日本酒1合(180ml)
● ウイスキーダブル1杯(60ml)
度数が高いお酒の場合は、わずかな量でも飲酒運転になります。
また体調が悪いときや睡眠不足のときは酔いが回りやすくなります。無理に運転した結果、居眠りによる事故を起こすかもしれません。
「お酒を飲んだら運転しない」を徹底して、公共交通機関で帰るようにしましょう。
アルコールが体から抜けるまでにかかる時間
アルコールが体から抜けるまでにかかる時間には個人差があります。また肝臓の大きさや筋肉量、性別や年齢などもアルコールの分解に影響を与える要素です。
一般的に、アルコール1単位の分解にかかる時間は3~4時間といわれています。例えば、ビール中瓶を3本飲んだ場合は分解するまで9~12時間がかかり、半日近く経ってもまだ体からアルコールが抜け切らない計算です。
アルコールが体から抜けるまでには想像以上の時間を要し、特に女性の場合は男性よりも抜けにくい傾向があります。
お酒を飲んだ翌朝も注意が必要
前日に大量のアルコールを摂取した場合は、翌朝にも注意が必要です。
前述したように、アルコール1単位を分解するのに3~4時間かかるため、大量のお酒を飲んだ翌日は朝になっても体内にアルコールが残っています。
特に眠っている間は、アルコールを分解するスピードが遅くなります。体から完全にアルコールが抜けていない状態で運転して、検挙されるケースは珍しくありません。
翌日に運転する予定がある場合は、アルコールを摂取しないのがおすすめです。付き合いでどうしても飲まなければならないなら、お酒の量をできるだけ少なくしましょう。
飲酒運転は死亡事故率が通常よりも高い
飲酒運転による交通事故では、通常の事故と比べて死亡率が高いといわれています。
警視庁の調査によると、令和5年に発生した飲酒運転による交通事故の件数は2,346件です。そのうち死亡事故件数は112件でした。
飲酒運転は厳罰化されたことで、以前よりも減少傾向です。しかし、飲酒運転の死亡事故率は飲酒なしの約6.1倍となっています(※)。
この数値から、飲酒運転は死亡事故につながる可能性が高いと分かるでしょう。悲惨な死亡事故を起こさないためにも、飲酒後の運転は絶対に避けましょう。
少し飲んだだけでも運転してはいけない
飲酒運転は、アルコール濃度の基準値以下であっても決して行ってはいけません。3%とアルコール度数が低い缶チューハイ1本であっても、基準値に達していないだけで飲酒運転です。
道路交通法では、飲酒量ではなく、体内のアルコール濃度と運転能力の状態によって違反が判断されます。すでに説明したように、酒気帯び運転として処罰の対象となるのは、呼気1L当たり0.15mg以上のアルコールが検出された場合です。ただし、それ以下の濃度であっても、体質や体調によって正常な運転が困難な状態であれば、酒酔い運転として取り締まられる可能性があります。
またアルコール度数が低い飲み物であっても、飲酒翌日になっても体内にアルコールが残存している場合があるため注意が必要です。近年、飲酒運転による事故が社会問題となり、取り締まりが一層厳格化されています。少量の飲酒であっても、運転することは必ず避けましょう。
お酒を飲んだら決して運転しないようにしよう
「車検の速太郎」では、車検を通じてお客様の安全なカーライフを応援しています。そのため、不幸な事故に繋がる飲酒運転は絶対に止めましょう。本記事を読んで、飲酒運転で検挙されると違反点数が加算され、行政処分や罰則の対象となることは理解いただけたでしょう。高額な罰金の支払いも科せられるため、検挙されてから後悔することになります。
また飲酒運転は自分だけでなく、同乗者も検挙の対象です。事故を起こせば、周囲の人を巻き込む可能性もあります。
加えて飲酒運転の死亡事故率は、飲酒なしと比べて高いのも事実です。新年会や年度末の送別会、春の送迎会など、お酒を飲む機会は少なくないでしょう。「1杯だけなら」という考えはやめ、飲酒運転の危険性を理解して「お酒を飲んだら運転しない」を徹底する必要があります。運転者だけでなく周囲の人とも協力して、飲酒運転ゼロを目指しましょう。