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ゴーストフィルムを貼った車は車検に通る? 合格の基準や注意点を解説

2024.07.02

ゴーストフィルムとは、オーロラフィルムとも呼ばれ、自動車ガラスに貼り付けするカーフィルムの一種で、従来のスモークフィルムやミラーフィルムと違い、紫や青など様々な色にガラスが発色しているように見えるもので、街中でそのような車を見かける機会も増えてきました。
一般的に見る角度や天気によって色が変わるフィルムをゴーストフィルムと呼ぶことが多いですが、ゴーストフィルムはブレインテック社のゴーストシリーズフィルムのことを指しています。このコラムでは従来のスモークフィルムとは違ったオーロラタイプのフィルムのこととしてゴーストフィルムという呼び方をします。

ゴーストフィルムを施工した車は、法律で定められている基準を満たしていれば車検に通ります。しかしゴーストフィルムの種類や貼り方によっては、車検に通らないこともあります。車検上の基準を知らずにゴーストフィルムを貼ると、車検時に通らないかもしれません。

この記事では、ゴーストフィルムを貼った車が車検に通る要件や通らないケース、注意点などを解説します。ゴーストフィルムを貼る前に、ゴーストフィルムや車検に関する基本的な知識を身に付けておきましょう。

ゴーストフィルムを貼っても基準を満たせば車検に通る

ゴーストフィルムを窓ガラスに貼った車であっても、基準を満たしていれば車検に通ります。車にゴーストフィルムを貼ろうと考えているのであれば、車検における基準についても確認しておきましょう。

車検に通るのは三面の可視光線透過率が70%以上の場合

ゴーストフィルムを貼った車が車検で合格となるのは、以下三面のガラスの可視光線透過率が70%以上の場合です(※)。

● フロントガラス
● 運転席横のガラス
● 助手席横のガラス

国土交通省が定める道路運送車両の保安基準では、車の窓ガラスについて「告示で定める基準に適合するもの」としています(※)。その上で、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」で具体的な数値が示されています。

可視光線透過率は、ガラスを透過する光の割合を数値で表したものです。可視光線透過率が高いほどガラスの向こう側は見えやすく、低いほど見えにくくなります。可視光線透過率70%以上と定められているのは、ドライバーが安全に運転するために、周囲の交通状況を見て確認するのに必要だからです。

逆にいえば、窓ガラスにゴーストフィルムを貼っていて、可視光線透過率が70%未満となっている車は、車検には通りません。またスモークフィルムやミラーフィルムなど、ゴーストフィルム以外のカーフィルムに関しても可視光線透過率の基準は同様です。

車検時の可視光線透過率は基準を満たした測定器で判定

車検時のガラスの可視光線透過率は、2023年1月13日の国土交通省 自動車局整備課から各地方運輸局・沖縄総合事務局への通達により、基本的には保安基準を満たした測定器を使用して判定されることになりました。保安基準を満たした測定器を使用しない場合は、運輸支局などに車を持ち込んで受検する方法を取ります。

通達で例示として挙げられている測定器は、光明理化学工業製のPT-500とPT-50です(※)。この測定器を保有している指定工場(民間車検場)であれば、透過率のブレはなく、同じ判定が下されると考えて良いでしょう。

ゴーストフィルムを貼った車が車検に通らないケースとは?

保安基準に則って製造販売されているゴーストフィルムを貼ったとしても、車検に通らないことがあります。考えられるケースは主に以下の3つです。

1. 車の窓ガラス自体の可視光線透過率が低い

車検に通らない理由としてまず考えられるのは、ゴーストフィルムを施工した車の純正ガラスそのものの可視光線透過率が低い場合です。

ゴーストフィルム自体の可視光線透過率が70%以上をクリアしていたとしても、窓ガラスに貼った後で測定すると、可視光線透過率が低くなる場合があります。窓ガラスに用いられている純正ガラスの仕様は各メーカーの車種ごとに異なるため、ゴーストフィルムだけでなく、ゴーストフィルムを貼る前の状態で、窓ガラスの可視光線透過率を把握しておくことが大切です。

窓ガラスに貼った状態での可視光線透過率が70%未満であれば、車検には通りません。

2. 車検までにゴーストフィルムが経年劣化した

車に貼ったゴーストフィルムの経年劣化も、車検に通らない理由の一つです。カーフィルムは紫外線や気候の影響を受けるため、長期間窓ガラスに貼ったままだと劣化し、可視光線透過率が低下することがあります。

以前の車検には通ったのに今回は通らなかったという場合は、ゴーストフィルムの経年劣化が関係しているのかもしれません。ゴーストフィルムを施工した後も、定期的に車のメンテナンス時などに状態をチェックしておきましょう。

3. 車検を依頼した工場で不備や誤解がある

車検を依頼した指定工場で不備や誤解があるケースも考えられます。例えば指定工場が可視光線透過率を判定する際に、保安基準を満たさない簡易測定器を使用していたり、そもそも測定器を保有していなかったりする場合です。その場合は車検で可視光線透過率を測る際に、適正な判定ができない恐れがあります。

また可視光線透過率にかかわらず、「ゴーストフィルム=違法」と誤解している工場の場合は、車検自体を断られるかもしれません。国の告知や通達を正しく認識し、基準を満たした測定器を用いて判定を行う工場に車検を依頼しましょう。

車検に落ちた場合はゴーストフィルムの除去・貼り直しを検討した方が良い

純正ガラスとの相性やゴーストフィルムの経年劣化によって、可視光線透過率が70%を下回る場合は、ゴーストフィルムの除去や貼り直しを検討しましょう。車検に通らないだけでなく、不正改造された車として道路運送車両法に違反してしまうためです。

地方整備局長によって保安基準に適合しないと判断されると、整備命令を下され、自動車のフロントガラスに整備命令標章が貼られます(※1)。

整備を拒否した場合のペナルティは、50万円以下の罰金です。また命令を下されてから15日以内に整備した車を提示しないと、最大6カ月間自動車の使用の停止が命じられます。命じられた自動車の使用停止期間を守らなかった場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるとされています(※2)。

加えて整備不良車を運転するのは、道路交通法違反です。道路交通法では、整備不良車を運転すると3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金が発生すると定められています(※3)。

ゴーストフィルムを貼るときの注意点

ゴーストフィルムを貼るときは、車検に通る基準を頭に置いておくことが大切です。

自分でゴーストフィルムを選び、貼り付ける場合は、まず可視光線透過率や車検対応の表示を確認しましょう。また車検での可視光線透過率は窓ガラスに貼った状態で測定されるため、ゴーストフィルムだけでなく、純正ガラスの可視光線透過率も考慮する必要があります。自分では計算が難しい場合もあるため、施工は保安基準に適合した測定器を保有する施工店に依頼するのがおすすめです。

なおゴーストフィルムのメーカーは、カーフィルムの施工店に独自の認定制度を設けています。認定店はPT-500もしくはPT-50の測定器を持つことが条件となっており、保安基準に則って施工してくれます。カーフィルムの認定店にゴーストフィルムの施工を依頼し、適切なタイミングで測定を実施すれば、車検の際も心強いでしょう。

ゴーストフィルムの判定基準を知って車検に臨もう

車にゴーストフィルムを貼ること自体は違法ではなく、保安基準に示されている範囲であれば車検に通ります。合否を分けるのは、フロントガラス・運転席横ガラス・助手席横ガラスの可視光線透過率です。ただし貼るゴーストフィルムそのものの可視光線透過率が問題なくても、貼った後の状態によって車検に通らないことには注意しなければなりません。

これから施工する場合は、車検を念頭に置いてゴーストフィルムや施工店を選び、施工後も定期的に状態を確認しましょう。